GLOBAL COACHING

DIALOGUE

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自分が変えられること・変えられないことの区別のつけ方

—— 自分で変えられる部分と、変えられない部分の線引きって、色々難しかったりすると思うんですが?

僕が言ったわけではないんですけど、
「自分が変えられないものを受け入れる潔さをください。自分が変えられるものを変える勇気をください。そして、両者の違いを見分けられる知恵をください」※
という言葉があります。

変えられるものと変えられないものっていうことでよく言われるのは、「変えられるものは、自分と未来。変えられないものは、過去と他人」ということですが、これは僕も常に頭に置いています。

僕がやってきたコーチングも、「他人を変えようとしても変えられない」っていう認識がベースにあるんですよね。過去についても、自分の過去の解釈は 変えられるけれども、過去そのものを変えることはできない、という認識が土台にある。だから、コーチングではすでに起きた過去よりも、これから起こる未来 のことに焦点を当てるんです。

あんまり使われない言葉なんですが、レバレッジという言葉があって、自分で変えられる範囲が大きいことを「レバレッジが大きい」とか「レバレッジが きく」とか表現することがあります。それでいうと、自分と未来は(レバレッジが)ききますが、他人と過去は(レバレッジが)あまりきかない。

コミュニケーションの中で、よく他人とか過去のこととかを変えようとしてエネルギーを使ったりしますが、たとえば誰かが仕事に失敗したときに、「何 で失敗したんだ?」って追求してもあまり意味はありません。そういうことを聞くよりも、すでに起きたことを受け入れて、「これからどうして行きたい の?」って聞いた方が会話として生産性があるのではないか、と。

人に「気づき」をどう提供するか

—— 何かを、全く知らない状態の人に対して気付かせたいという時、どうされますか?

結局、気付くか気付かないかは、自分にはコントロールできないんですよね。でも、気付かせようとすることはできる。コントロールできる部分はそこま でです。だから一生懸命話しますよ。そのことが大事なことで、相手が大事であれば、それだけの労力や時間を割こうとしますよね。

でも、最終的に気付いてくれるかくれないかは、自分にコントロールできない。にもかかわらず、そこに自分が責任を持とうとすると辛くなるんですよ。 一方で、「こいつはダメだ」といって相手を突き放しても状況は何も変わらないわけで、言うだけは言うけど、最後の部分は手放すしかないんですよね。

自分ができるところについては、自分がこれ以上うまくは言えないというくらい精一杯に、これ以上割けないというくらいたっぷりと時間を割いたけれども、それでダメなら仕方がないと。

あとは、「気付かせる」って言うと、いかにも「自分が正しい」みたいな感じがしますよね。少なくともそういう思い込みがあるなって。だから、僕は 「気付かせる」ではなく、「シェアをする」っていうスタンスをとることが大事だと思っています。「シェアをする」っていうのは、「分かち合う」という意味 ですが、「僕はこう思うんだけど、あなたがどう思うかわからない」っていうスタンスでいると、双方にとって精神衛生上いいような感じがします。

あくまで「僕は僕なりの経験をしてきたからこう思うんであって、必ずしも正しいわけじゃない」っていうことをわかっていないと、すごくストレスが溜まるんですよ。相手は相手の人生を生きてきているし、相手がそう思うにはそれなりの理由があるわけですから。
そこの部分をコントロールしようとしちゃうと、すごい苦しい。

だから、相手に何か気付いてほしいと思ったとき、決して何もしないわけじゃない。放任するわけではないんです。一所懸命自分の想いを共有しようとできるだけの努力はする。で、結果的に共有できなかったら、自分のせいにも相手のせいにもしない。

榎本さんの「今」の取り組み

—— 最後に今何をしているかについて話してもらえますか?

今日お話したこととも関係しますが、やっぱり自分の人生を他人とか社会とかに依存したくない、という思いが強くあって、今はどうしたら人々が今の世の中のしくみに依存せずに生きられるようになるか、ということを追求しています。

例えば、「食」っていうことで言うと、昨今では餃子中毒事件とか、うなぎの偽装問題とか、いろいろと安全性の問題がありますよね。それに、石油の値 段が上がって、食料の値段もそれにつれて上がってるじゃないですか。消費者は困りますよね。これ毒が入ってるのかしらとか、どこまで値段が上がっちゃうの かしらっていうのは自分でコントロールできないですから。

それってすごく無力感を感じさせると思うんですよ。それは、いまの農業のしくみ、経済のしくみが、すごく依存を作りやすい状態になっているからなんですね。すごい便利ですよ、スーパーにいけば何でも揃ってるし・・・。でもそれって、ほんとに幸せにつながるんだろうかって。

食べ物の場合、1日何回か身体に入れないと生きていけないわけですが、それが本当に身体にいいものなのかわからなくても、食べないわけにはいかな い。つまり、そういう生きて行く上で基本的なところが自分でコントロールできないわけです。そういうのって、すごく不安とか依存心とかを引き出すと思うん です。

そこで、たとえば、自分や自分の家族が食べるものを、自分でつくりだすことができたら、それが自分の精神状態に与える影響って計り知れないと思うん ですね。もちろん、全部は自分でまかなえなくても、隣人や仲間たちと協力して可能な限り自分たちが必要とするものは自分たちの手でなんとかする。たとえ、 ほんのちょっとしたことだけでもいいんです。都会で働きながらは無理かもしれないけど、たとえばベランダとかでミニトマトくらいは育てるとか、それだけで も全然違うと思うんですよ。

要するに、他人というか、外に明け渡してしまったパワーというのを取り戻さないといけない、っていう自分の人生のテーマなんです。

コーチングをやってるときは、内側から依存心を排除することに焦点を当ててきたけど、これからは外の社会を、依存を育まないようなシステムに変えていけるような仕事をやってみたいなと思っています。

※インタビュー中の詩はRachell Sowders(ラシェール・サウダーズ)のSerenity Prayers(潔さの祈り)

榎本英剛(えのもと・ひでたけ)プロフィール

1964年、兵庫県生まれ。1988年、一橋大学法学部卒業、株式会社リクルート入社。1994年、渡米。California Institute of Integral Studiesに留学し、組織開発および変革論を専攻。1997年、同校より修士号を取得。留学中 The Coaches Training Institute(CTI)にてコーチングを学び、1996年にCPCC(Certified Professional Co-Active Coach)資格を取得。2000年、CTIジャパンを設立し、日本でCTIのコーチング・プログラムを提供開始。現在、同社顧問。
【CTlジャパンのホームページ】http://www.thecoaches.co.jp

聞き手:本多喜久雄プロフィール

1987年 慶応義塾大学 経済学部卒業。(株)リクルート入社。1996年同社に所属している時に、アメリカサンフランシスコにて、コーチングの研修に参加。以来プロフェッショナルコーチとして、社内外で多くのクライアント(コーチングの対象者)の成功をサポート。

(株)リクルートのマネージャーとして、社内でのチームビルディングや部下のコーチングを通して、売上げ拡大や新規事業の 立ち上げを実現して来ました。2005年に同社退社後、ベンチャー企業のCOOなどを歴任し、コーチングだけでなく実業で「機能する」コミュニケーション の技術を研究、実践中。

コーチングの得意分野は、経営者のコーチング(特に企業理念、ビジョン、経営・営業戦略作りとその浸透、IPO準備)、営業マンのスキルアップ、風土改革のための集団コーチ(集団ファシリテーション)。
米国CTI認定 プロフェッショナル・コーアクティブ・コーチ(CPCC)。

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