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対談コンテンツ

「医療現場におけるコーチングの事例研究会」から

2010年7月31日に行なわれた「医療現場におけるコーチングの事例研究会」では、現役院長の星野和彦先生(ほしの内科クリニック)とグローバルコーリング 代表 本多喜久雄との医療現場におけるコーチングの活用事例が参加者に伝えられました。 開業医は「医者」であると同時に「経営者」でもあります。そして多くの開業医は医療に関する訓練は十分に行ないますが、経営に関してはよくわからないまま開業することがほとんどです。そして医療というコンプライアンスの遵守が重要であり、評判に対してセンシティブに扱う必要がある業種ゆえに経営に関する悩みを誰にも相談できずに悩みから抜け出せない開業医が多いと聞きます。 今回、星野和彦先生という「医療のプロフェッショナル」であり、「初めて企業(医療法人)を経営する」という立場のクライアントに対して、コーチングによってどんなアプローチをおこない、そして成果を出したのか。本対談より感じ取っていただければ幸いです。

星野和彦

星野和彦

星野和彦

経歴

横浜市泉区出身
[平成5年]国立弘前大学医学部卒業
[平成5年]横浜市立大学病院臨床研修医として内科全般・救急科・眼科・皮膚科等を担当
[平成7年]横浜市立大学第三内科(現 内分泌糖尿病内科)入局
[平成9年]朝日生命糖尿病研究所にて国内最先端の糖尿病医療を学ぶ
[平成13年]横浜市立大学第三内科 助手
[平成15年]藤沢市民病院内科(糖尿病・甲状腺・代謝疾患担当)医長
[平成17年]藤沢市民病院内科主幹
[平成19年]ほしの内科クリニック開院  現在に至る

資格

[資格]日本内科学会認定医 / 日本糖尿病学会専門医 / 日本糖尿病協会療養指導医
[その他]湘南糖尿病懇話会幹事 / 藤沢糖尿病勉強会幹事 /
藤沢腎高血圧研究会幹事 / 神奈川県糖尿病対策推進委員

メディア出演・講演 等

『リビング湘南』に取材記事が掲載[2010年]
よみうりTV、中京TV系列『愛の修羅バラ』に出演[2010年]
TBSテレビ『ざっくりマンデー!!』に出演[2009年]
TBSテレビ『ネプクリニック 180°変わる医学常識』に出演[2009年]
テレビ東京『レディス4』糖尿病特集に出演[2007年]
医療法人星和会 ほしの内科クリニック
HP:http://www.hoshinoclinic.net/

インタビュアー

本多喜久雄

本多喜久雄

本多喜久雄

経歴

1987年 慶応義塾大学 経済学部卒業。
(株)リクルート入社。1996年同社に所属している時に、アメリカサンフランシスコにて、コーチングの研修に参加。以来プロフェッショナルコーチとして、社内外で多くのクライアント(コーチングの対象者)の成功をサポート。(株)リクルートのマネージャーとして、社内でのチームビルディングや部下のコーチングを通して、売上げ拡大や新規事業の立ち上げを実現してきた。
2005年に同社退社後、ベンチャー企業のCOOなどを歴任し、コーチングだけでなく「実業で機能するコミュニケーションの技術」を研究、実践中。
米国CTI認定 プロフェッショナル・コーアクティブ・コーチ(CPCC)
※映像提供:株式会社PCC

閉塞感が打破された

—— 参加者の率直な質問から。

参加者
お二人にお聞きしたいのですが、最初コーチングを受けはじめたとき、職員の皆さんはどういう反応をされていましたか? そして今どう思っているのでしょうか?
本多
反応はどうだったんですか? (本多が星野先生のコーチをしていることを)知らなかったですかね?
星野
そうですね。受け始めるときに わざわざ職員に説明したわけではありません。 コーチングを始めた後に、少しずつ本多さんに職員全体の会議にも出てもらうようになって、本多さんが直接職員に接することが増え、今では、会議だけでなく忘年会などにも参加してもらうようになってきています。 そんな中でも、職員からは私が本多さんのコーチを受けている姿を見て「この職場をなんとかしようと思っている」というのは伝わっているんじゃないかなと思います。そういったことが職員からの自分に対する信頼感をもたらしているのかなと。
本多
そうですね。それは私も看護師さんと会話して、すごく喜ばれたという経験があって、それはコーチとして私が組織に入ったときに「何か閉塞感が打破された」「組織が閉ざされていない」という感覚でしたね。 これまでは「院長が言ったことが絶対だ」というところから少し穴が開いて「外の世界とつながっているかもしれない」という感覚に変化したんだと思います。 最近入職された看護師さんが、「こういうふうに院長自らコーチを付けて自己改革や組織改革に取り組んでいることはとてもすばらしい」と話してくれて、評価していただいたなと感じています。
参加者
今はどうですか?
本多
僕の体験は「友達」っていう体験があって! 相手はどう思っているか分からないけど(笑) 職員の方々本当に素晴らしいんですよ。看護師さんも受付の方も栄養士さんもとても仲良くしていただいています。普段連絡を取り合う仲ではないですが、何かあったときにSOSが出せたり、外の世界に発信できるっていう安心感はあるんじゃないかなと思います。どうですか?(星野先生へ)
星野
そうですね。個人医院は「院長が絶対的な権力を持っていて、それに従うものが働く」というのが従来のスタイルだとして、職員も「貪欲に職場で何か成し遂げよう」とか「目的を達成させよう」という欲求が無く、どちらかといえば「お給料がちゃんと貰えて定時に帰れる」というスタイルが求められている風潮があります。 それはそれで問題ではないのですが、うちの職員はそれとはちょっと違いますひとりひとりがポリシーや目標を持って今働いてくれています。まだ私も成長過程にあるので、それを背中で一人見てくれている人(コーチ)がいるというのは、職員にこの上ない安心感をもたらしているんだなと思います。 まぁ、これからのクリニックはこういったスタイルのほうが、院長の絶対的権力が充満するスタイルよりも効果的なのではないかと思いますし、もっといろいろなスタイルがあっていいいと思います。

以前よりもコミュニケーションがとれるようになりました

参加者
コーチングを受ける前、実際に開業して困っていたことは何でしたか?
星野
開業後、患者さんが日に日に増えていくことに充実感がありましたが、1年くらい経って落ち着いてくると、それはそれなりに単調とした毎日で「このままでよいのかな」と漠然と考えていました。 そして、同業者に相談しても「そのままで良いじゃない」と言われる程度で、なかなか良い解決には至らなかったし、継続して心から相談するという相手がいるようでいなかったです。 様々な難題が降りかかってくると自分なりに対応し解決していきましたが、日々診療を続けていく中で診療以外に「これが続くのは結構重いな」というのが実際に困っていたことでした。
本多
それらのことは、開業する前も予測されてたことだったんですか?
星野
予測していませんでした。今まで(勤務医のとき)は人と意見がぶつかることや、トラブルなどほとんどありませんでした。職場では黙々と仕事をし、それなりに評価もされていたので、開業しても対人関係で困ることはないだろうと考えていました。ところが、そうではありませんでしたね(笑) 今は職員が本当に何を思っていて、何が言いたいのかが見えてきました。以前よりもそれだけコミュニケーションがとれるようになったということでしょうか。
参加者
例えばどんなことですか?
星野
例えば、私が患者さんに話したことや治療について指導したことについて、職員が感想を述べたり意見をします。「そんな見方もあるんだ」と思うことを、職員が意見してくれるようになりました。 今までは医療現場で患者さんに向き合うのは医者であり、看護師(職員)はそのサポート役と思っていました。今は全員がチームとなって患者さんに関わってる感触があります

患者さんが患者さんを呼ぶということ

本多
今までお話ししてくださった成果も含め、コーチングの成果についていくつかの領域で伺いたいのですがクリニック、患者さん、自分自身ではいかがですか?
星野
クリニックは業績は上がっていて、患者さんがコンスタントに増えてきました。一番の要因は「患者さんが患者さんを呼ぶと」いうことです。ここで治療をうけた患者さんがまた別の患者さんを自然とつれてきてくれるというサイクルができています。それは、例えば職員が患者さんに対し親身になってよく話をきき、そのことが結果的に満足へつながり他の患者さんに伝わり、評判になっているということですね。職員が一体となって「ここは自分の活躍する場だ」「自分のクリニックだ」と思えるようになってきたと思います。 患者さんについては、我々がそうやって変わることで自ら心をオープンにしてくれて、待合室で患者さん同士が(知らない人同士が)談笑し合っている雰囲気ができてきていますよ。クレームがほとんどないということも患者さんが満足してくださっている証だと思います。 自分自身のことは、以前は「自分が努力し頑張れば結果はついてくる」と考えていましたが、今は「経営者であり、患者さんを幸せにするということと同時に、ここで働く職員も幸せにするというのも大切な役目である」という意識が芽生えてきました

全部オープンに話しています

参加者
日々、意識していることは何ですか?
星野
その日の午前中にあったことはその日の昼のミーティングで議題としてとりあげて解決します。といっても10分程度です。午後にあったことは次の日の午前中でやっています。今は自分から議題をあげていることが多いので、今後は職員側からあがってくると良いと思います。
本多
なるほど。今後職員から議題をあげてもらうために、何が必要だと考えますか?
星野
何かを決めるときにオープンにして話し合うということも心がけています。自分の中でいろいろ考えて、「こうすることになりました」と突然伝えても、それがとてもいい内容であっても職員達は非常に驚き混乱しますよね。その思考の過程とか想いをオープンに分かち合いながら進めていくことが大事なんだと気付きました。 今は全部オープンに話しています。クリニックの職員同士の親密度が上がったと思いましたし、何か悪いことが起きても、それをよい成長に変えられる力をつけています。クリニックが成長したと思っています。

夢は考えを共有できる仲間と組織を大きくしていくこと

参加者
患者さんに関してや職員の方々とのコミュニケーションについて、他に具体的によくなっている事例はありますか?
星野
患者さんとのコミュニケーションもやっぱりコーチングを活用することで得られるものはあるのかもしれません。しかし、そっちにはあまり悩んでいなくて、、、
本多
実は、星野先生が患者さんとどう応対してるかを見学させてもらったことがありまして、すばらしいと思いました。非常にすばらしい。 まだまだ進歩、前進できることはあるなと思うのですが、今日も皆さん感じられているかもしれませんが患者さんの話を良く聞くという姿勢が十分にあるというのが実際に見学させてもらったときの感想です。
星野
そうですね、コーチングの技術を患者さんに施す、つまり今度は僕がコーチとなってモチベートするようにできないかなと思うんです。 診察しているところをみてもらってよかったのは、医療現場は今かなりコンピュータ化されていて、診察時に電子カルテにキーボードで打ち込んでいます。できるだけ患者さんを診ようと意識はしています。でも本多さんに「身体はキーボードを打つ方にいっちゃっている」と指摘されまして、それから、患者さんの方へほんの数秒でも正面で向き合う時間をつくることを意識してます
参加者
今、先生が思ってらっしゃるモチベーションというのはどのくらいのものなのでしょうか? そして、今後の夢なのか、未来に考えていることはなんですか?
星野
「全部一人ではできないな」と、「自分のやっている仕事を職員に任せられるように職員教育をしていこう」ということと、医者でなきゃ出来ないことは多々ありますので、いつかは自分一人では全部出来なくなるだろうと察しています。そのためにハード面でも規模を大きくしていこうと考えています。 自分の考え方に同調してくれる方を雇い入れて、ノウハウを教えを伝えていくという、これは夢ですけど料理の世界のように門下生のような医師をたくさんつくり、知識を分け与えて向上し合い、組織として拡大していくスタイルをつくりたいですね。
本多
意識してみてどうですか?
星野
患者さんにも伝わっているなと思いました。本当はずっと正面を向かなければいけないのですが、今の患者さんの数と、コンピュータにデータを入れる現実からするとそれは不可能です。でも、向き合う意識でより患者さんと近くなると思いました。

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