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基軸の作り方には4つのタイプがある

秋山
理念や価値観といった基軸の作り方には2つの軸があり、それぞれ2つの類型があるので、2×2の4パターンあります。 一つ目の軸は、外部の規範を重視して作る「外部規範中心」か、自分たちが大事にしてきた内部の視点を中心にして、外部からは必要な規範だけを取り入れて作る「内部規範中心」か、による分類です。 もう一つの軸は、あらゆる観点でルールを細かく定めていく「ルールベース」か、原理原則を重視して実際の現場においてはそれを判断基準にして臨機応変にやっていこうとする「プリンシプルベース」か、による分類です。 上記の2軸で分けると、表のような「コンプライアンス型」「規定型」「CSR型」「経営理念型」という4つのパターンに分類できるのです。
  外部規範 中心 内部規範 中心
ルールベース コンプライアンス型 規定型
プリンシプルベース CSR型 経営理念型
秋山
今日、来られている経営者の皆さんは、原理原則を明確にしながら、外部規範よりも自分たちの大事にしたいものを中心にするという「経営理念型」の方が多いのだろうなと推測します。 さて、今日のような環境変化の大きな時代の中で、実際にこれらのタイプを実践していくと、どんなメリット、デメリットがあるのか。それをまとめたのが次の表です。
タイプ 攻め 守り 実行難度
コンプライアンス型 規制産業 × 身動きとれず ○ とりあえず言い訳はできるものの……
規定型 役所 × 身動きとれず △ 社会と調和せず、身勝手になる可能性あり 普通
CSR型 優良企業 △ お上品になり過ぎて変革できない傾向強い △ 2枚舌になりやすい。
経営理念型 ユニーク企業 ○ 良い意味の逸脱も可能 △ 社会と調和せず、身勝手になる可能性あり 超難
秋山
一つずつ解説します。 (1) コンプライアンス型 コンプライアンス型の典型は、規制産業と呼ばれる業界の企業です。また、本部からの指令通りにやるFCなども、形態こそ違うものの実質的にはこれに相当するでしょう。このタイプは、なにか問題があった場合も、決められたルール通りにやっていましたと言えるので、守りは割と強い。 一方、これが攻めになると、身動きがとれません。細かくルールが決まっているので、現場はルールに書いてないことはやらなくなりますし、書いていないことをやると問題視されることが多いので、結局新しい取組みができなくなってしまう。コンプライアンス型は、管理部門には実行しやすく受けがいいのですが、必要以上のルール漬けになり、会社が駄目になっている例がたくさんあります。 (2) 規定型 規定型は、内部規範中心かつルールベースの規範設定です。コンプライアンス型と似ているところがありますが、外部からの指導ではなく、内部でいろいろなことを決めルール化していきます。その典型がお役所と言えるでしょう。伝統的な大企業で、本部のエリートが現場を指導しているような企業もこのタイプに該当しています。またトップが何でも自分で決めて言った通りにやらせるような企業もこれに該当します。 コンプライアンス型と同様、ルール通りにやれば問題視されません。これまた同様に、攻める場面ではほとんど身動きがとれません。規定型に特有の問題は、ガバナンスが効かなくなることがあることです。なんでも自分たちで決められる状態にあることは、すなわち外からあまり言われなくていい状況が確保されている、ということなので、勝手な行動をやり始めても止められずに、社会と調和がとれず、気がついたら大きな問題になっていることがままあります。 (3) CSR型 CSR型は、外部規範中心でありながら、ルールを細かく決めるのではなく、原理原則を中心にある程度自由に対応していくことを志向しています。いわゆる優良企業で、何かで外部の優良性の基準が示されれば、それにあわせて対応しようとする会社です。女性の活用や、福利厚生、その他あらゆる面にわたってきちんと対応されています。 このタイプは、表向きのきれいさは良いのですが、現場では結構苦労していることが多いのです。現実はそんなきれいごとばかりでは済まされません。表で言っていることと裏でやっていることが食い違っていることをどうにか調整しながら、かつ利益を上げるのは大変です。 CSR型は、もともと優良企業でお金も人も余裕がある会社です。したがって、さまざまなステークホルダーと良好な関係をとりむすんでいるがゆえに、事業の撤退や経営資源の集中など、思い切った経営改革ができないという問題があります。大事な意思決定ができず、気がつけば赤字に陥っている元優良企業、になることがあります。 (4) 経営理念型 経営理念型は、内部規範中心かつプリンシプルベースです。大事なことだけを決めていて、現場は必ずしも杓子定規にルールで決められた通りをやれと言われるわけではありません。ポジティブな意味で逸脱も可能で、今までになかったチャレンジを現場がやる可能性が高くなります。 ただ、社会のことを忘れて、自分たちのやりたいようにやり始めてしまうと、暴走してしまいます。気がつけば社会からレッドカードを出されてしまうということにもなりかねません。 経営理念型は、一見、理想的なタイプに見えますが、実行の難易度が高くて、なかなか実現できるものではありません。なぜなら、経営理念や価値観の定義やその具体的な中身を、あらゆる機会を通じて社員に浸透させてゆく必要があるからです。そこには大きなコストとエネルギーがかかります。多くの方が「経営理念型は素晴らしいですね」と言いますが、本当にやることになったらものすごく大変です。

経営理念型を実践するための3つのポイント

秋山
4つのタイプには、それぞれメリット、デメリットありますが、環境変化が大きい今のような時代でどれがいいかといえば、明らかに経営理念型です。とくにルールベース(コンプライアンス型、規定型)のタイプは 中心にいる人たちが環境変化を素早くとらえて、瞬時にルールを変え、それを浸透させるという、精密なコンピューターのごとく組織を動かせないと、厳しいと思います。 一方、先ほども言いましたが、経営理念型は、理想的ではありますが、浸透させていくためのエネルギーが要ります。もうひとつの懸念は、理念を提唱した人が往々にして神格化されてしまうことです。本当は原理原則だけを定めて、あとはそれぞれの現場で自由に判断するはずだったのに、気がつけば誰々さんがあの時こう言ったから、こうしたから……という判断になりがちです。オーナー経営者が一生懸命、理念を浸透させようとするときに陥りがちなのは神格化の問題です。 ここで、経営理念型を実践するためのポイントを3つ挙げておきます。 第一に、経営理念に社会性を取り込むことです。理念が浸透しても、他者への配慮がなく独りよがりになって、実践面で社会から逸脱してしまえば、社会から指弾されます。 第二に、可変部分と不変部分、最重要な価値とそうでもない価値を区分けすることです。いろんなことが大事だといわれますが、これは曲げてはならないという原理原則から、できればこうしたほうがいいというくらいの軽い行動原則まで、深さ、浅さがあるんです。その違いを理解し表現しておくことです。 第三に、環境の変化や事業の変化とともに、表面的なものはどんどん変えていいという認識づくりです。カリスマトップの言うことに縛られないために、浅い部分では変わってもいいし、自由にやっていいという認識を浸透させることです。その辺のバランスは大変難しいので、この部分での巧みなコミュニケーションが必要です。
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