GLOBAL COACHING

DIALOGUE

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元来の価値基準を損なわずに再建する

秋山
ある会社(A社)の経営変革のケースでは、基本的な価値観の再解釈をしました。そのうえで、実行レベルでの変革を促進させたわけです。
A社の場合、もっとも重要な価値観は「雇用」で、これがすべてに優先する価値でした。これにはいろいろと歴史的な背景がありますが、ここでは触れません。
不況で業績が厳しくなってきたとき、A社の取った対策は事業の多角化でした。これはそれまで手を出していなかった分野に進出することで、雇用を確保するという考えがベースになっています。しかし、多角化しても、そう簡単にすべてのビジネスが成功するわけもなく、さらに雇用には手をつけられないため、結果多くの事業がコスト高になり、苦境に立たされてしまいました。

企業の再建チームが入るといきなり過去の全否定をしがちですが、この方法はうまくいきません。この会社でも、雇用という価値自体を否定するのではなく、すこし解釈に手を加え、雇用を維持するためには全員で努力をして、会社が利益を上げないといけないということを浸透させるアプローチをとることになります。また、たとえA社という枠ではなくとも、他の会社に事業を引き継いでいただき、その会社で雇用は守るというスタンスを作ってもらったりもします。
たとえば、雇用の維持に最大の価値を置いてきた会社で、コストカットのために、リストラで首切りをするというような全面否定の手段をとると、組織行動が成り立たなくなります。もちろん、それをわかりつつも、実行しなければならない局面もありますが、その後の再建プロセスは大変難しいものとなります。

さらに会社のコーポレートスローガンにおいても、これまでの社会全体をどのようにしていくか、という大言壮語的なものから、人々の日々の生活にどれだけ正しく美しく貢献できるか、といった社員にとって身近なものに変えていきました。

理念に基づいた価値判断基準

秋山
新しい基軸を理解してもらうための一つの例として、次の問題を考えてみてください。

サンプルと実物で品質がほんの少しだけ違ったとします。本当のプロでないと把握できないレベルです。サンプルを全品交換すると数百万円かかってしまう。どう対応しますか?

1 サンプルを全品交換する。
2 成り行きをみて、騒ぎになりそうなら交換する。
3 利益確保を最優先させ何もしない。
3、あるいは2を選ぶという会社もあるかもしれません。 A社では、これに類する問題を作成し、1が基本となる答えであるというように決めて、社内で検定として実施しました。

先ほど触れた「人々の日々の生活にどれだけ正しく美しく貢献できるか」に定めた価値基軸を守る選択肢は1しかありません。もし2や3を選んだとしたら、会社と社員との関係は一気に崩れてしまうでしょう。「いくら表向き良いことを言っても、どうせ会社は目の前のお金のほうが大切なんでしょ。正しくないよね」ということになってしまいます。
さらに今の時代は、2や3を選ぶと損をするのです。品質に敏感な人はどこにでもいて、だれか一人が気づくと、インターネットなどを通じてあっという間に世間に広まってしまうのです。ブランド価値が下がり、数百万円どころか大損をします。

プロダクトマネージャー的には、自分の商品の利益目標があるので、どうしても目先の小さい損得で考えてしまうのですが、そういう小さい視点で意思決定がなされると会社全体がピンチになります。だから、会社の規範を浸透させて、間髪いれずに1の行動をするようにするのです。
損得レベルの判断から、価値レベル、善悪レベルの判断へ。こうした問題や物語の浸透を通じて会社の規範を浸透させていきます。理念に照らして、実際の行動をどうすべきなのか、という問題で理解を深めていくことができるのです。

なお、こういった深い価値については、担当者レベルで判断をすることは難しいのです。会社の価値判断基軸、行動志向パターンの変革といった重要事項に関しては、トップ自らがはっきりとしたメッセージを打ち出し、それに基づいたコミュニケーションの取り方をする必要があるでしょう。
以上、経営理念の基本的な枠組みと、どのように理念の浸透を図るのか、A社の例を通じて説明させていただきました。
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